大分市で発生したBMW194キロ死亡事故の玉田康陽被告の裁判員裁判初公判が2024年11月5日に開かれました。
当時19歳だった被告人の男性は、法定速度60キロを大幅に超える194キロで交差点に進入し、右折中の車両に衝突して50歳の男性を死亡させる事故を起こしました。
弁護側は「制御困難な高速度に該当せず」と主張し、世間から大きな批判を集めています。
この記事では、2021年2月に起きた死亡事故の詳細から、危険運転致死罪の適用を求めた遺族の署名活動、そして弁護側の驚くべき主張の真意まで、事件の全容を詳しく解説します。
- BMWで時速194キロの死亡事故を起こした被告人が、2024年11月5日の初公判で「危険運転について分からない」と供述
- 弁護側が「制御困難な高速度に該当せず」と主張し、過失運転致死罪での処罰を求める驚きの展開
- 遺族による2万8000人分の署名活動により、過失運転致死罪から危険運転致死罪へ訴因変更された経緯
- 制御困難の判断基準の曖昧さなど、危険運転致死罪適用の法的課題と11月28日の判決への注目
BMW194キロ死亡事故の全容!23歳被告人が起こした悲劇
2021年2月9日深夜、大分市大在の県道交差点で発生した死亡事故は、多くの人々に衝撃を与えました。
当時19歳だった被告人の男性が運転するBMWが、法定速度の60kmを130km以上超える194kmで交差点に進入し、右折中の小柳憲さん(当時50歳)の車に衝突。
小柳さんは車外に投げ出され、事故の翌日に亡くなられました。
事故現場の状況と被害者について
事故現場となった大分市大在の県道交差点は、一般的な交通量の多い場所でした。
- 事故発生日時: 2021年2月9日深夜
- 事故現場: 大分市大在の県道交差点
- 被害者: 小柳憲さん(当時50歳)
小柳憲さんは、事故当時右折中の車に乗車していました。
被告人の車両が猛スピードで衝突したことにより、小柳さんは車外に投げ出され、翌日に亡くなられたのです。
遺族の長文恵さんは、弟の最期を想像するたびに悲しみに暮れています。
「何キロ出るか試したかった」衝撃の供述
捜査関係者によると、被告人の男性は事情聴取の際、「何キロまで出るか試したかった」と供述していたそうです。
- 被告人の供述: 「何キロまで出るか試したかった」
- 供述時期: 事情聴取の際
この衝撃的な供述は、被告人の危険運転に対する認識の甘さを露呈するものでした。
人や車が存在する一般道で、スピードを試そうとする考えは、常識から大きく外れています。
被告人の行為は、周囲に甚大な被害を及ぼす可能性があったのです。
BMWの性能と194キロの恐ろしさ
事故車両はBMWでした。
BMWは高性能な車種として知られ、アウトバーンでの高速走行にも対応しています。
しかし、今回の事故現場は一般道。
法定速度は60kmに設定されていました。
- 事故車両: BMW
- BMWの特徴: 高性能、アウトバーンでの高速走行に対応
- 事故現場の法定速度: 60km
BMWの性能を考慮しても、一般道で194kmもの速度を出すことは非常に危険です。
運転手の操作ミスや判断の遅れが、取り返しのつかない事態を招く恐れがあります。
今回の事故は、車の性能と道路環境のミスマッチが引き起こした悲劇と言えるでしょう。
弁護側の驚きの主張「制御困難ではない」その真意は?
2024年11月5日、大分地裁で開かれた裁判員裁判の初公判。
裁判長から危険運転について問われた被告人の男性は、「そのようなことについてはわかりません」と述べました。
さらに弁護側は、驚くべき主張を展開したのです。
「わかりません」と答えた被告人
被告人は公判で、危険運転についての質問に対し「そのようなことについてはわかりません」と答えました。
- 被告人の発言: 「そのようなことについてはわかりません」
- 発言の場: 裁判員裁判の初公判
- 発言の時期: 2024年11月5日
被告人のこの発言は、自身の行為に対する認識の甘さを示唆するものでした。
194kmもの速度で走行し、死亡事故を起こしておきながら、危険運転についてわからないというのは、常識的に考えて不自然です。
被告人の態度は、遺族の心情を逆なでするものと言わざるを得ません。
弁護側が示す3つの根拠
弁護側は、被告人の行為が危険運転に該当しないと主張。
その根拠として、以下の3点を挙げました。
- 根拠1: 制御困難な高速度に該当せず
- 根拠2: 妨害する目的がない
- 根拠3: 過失運転致死で処罰すべき
弁護側は、被告人が車線から逸脱することなく直進走行できていたことから、194kmの速度でも制御可能だったと主張。
また、対向車線の右折車両に通行を妨害する積極的な動機はなかったとし、危険運転罪の成立は難しいと訴えました。
その上で、過失運転致死罪による処罰を求めたのです。
遺族と世間の怒りの声が訴因を変えた
当初、大分地検は被告人を過失運転致死罪で在宅起訴していました。
しかし、小柳さんの遺族らが危険運転致死罪への訴因変更を求めて立ち上がり、世論を動かしていったのです。
2万8000人の署名が示す民意
小柳さんの遺族は、危険運転致死罪の適用を求める署名活動を開始。
- 署名活動の目的: 危険運転致死罪の適用を求める
- 集まった署名数: 約2万8000人分
- 署名提出先: 大分地検
- 署名提出時期: 2022年10月
署名は全国から集まり、最終的に約2万8000人分が集まりました。
遺族は2022年10月、この署名を大分地検に提出。
世論の後押しを受け、検察は追加捜査に着手したのです。
過失運転から危険運転への転換点
大分地検は補充捜査の結果、被告人の行為が危険運転致死罪の類型に該当すると判断。
- 補充捜査の結果: 危険運転致死罪の類型に該当と判断
- 訴因変更の要件1: 進行を制御することが困難な速度で車を走行
- 訴因変更の要件2: 小柳さんの車の通行を妨害する目的で交差点に進入し車を著しく接近
- 訴因変更の時期: 2022年12月
検察は、被告人が「進行を制御することが困難な速度で車を走行」し、「小柳さんの車の通行を妨害する目的で交差点に進入し車を著しく接近させた」と判断。
2022年12月、より刑罰の重い危険運転致死罪への訴因変更を大分地裁に請求し、認められました。
遺族の粘り強い活動が、事態を大きく動かしたのです。
危険運転致死罪が適用されない理由①:津市タクシー事故の影
この事故を振り返る際、多くの人が思い出すのが2018年に津市で発生した事故です。
時速146kmで走行していた車がタクシーに衝突し、5人が死傷。
しかし、この事件では危険運転致死傷罪の適用が見送られました。
名古屋高裁は2021年の判決で、事故直前に車線変更の操作ができていたことを理由に、「進行を制御することが困難な高速度」の要件を満たさないと判断。
危険運転の成立を認めなかったのです。
津市の事故は今回の裁判でも引き合いに出される可能性が高く、弁護側の主張を後押しするものとなるかもしれません。
ただ、検察側としては、194kmという速度の危険性を強調し、津市の事例とは一線を画すことが求められるでしょう。
危険運転致死罪が適用されない理由②:法律の盲点
危険運転致死罪を巡っては、適用要件の曖昧さが指摘されています。
条文上、「制御困難な高速度」という表現はあるものの、具体的な速度の基準は示されていないのです。
「制御困難」の判断基準はなぜ曖昧?
裁判では、被告人の車がまっすぐ走行できていたことが「制御可能」の根拠となることが多いようです。
- まっすぐ走行できていることが「制御可能」の根拠に: 裁判での一般的な判断
- 制御困難の具体的な速度基準がない: 条文上の曖昧さ
一般道でのまっすぐな高速走行が本当に「制御可能」と言えるのか、疑問の声も上がっています。
突発的な危険に対応できる速度なのかどうか、総合的に判断する必要があるでしょう。
制御困難の具体的な速度基準がないことで、裁判での判断にばらつきが生じている点も問題視されています。
星周一郎教授が指摘する法的課題
東京都立大学法学部の星周一郎教授は、高速度類型の危険運転致死傷罪について以下のように指摘しています。
- 要件: 「その進行を制御することが困難な高速度」であること
- 従来の裁判例: 「自動車自体が物理的に制御できない速度」と解釈
- 課題: 制御困難の立証が検察の責任に
星教授によれば、従来の裁判例では「自動車自体が物理的に制御できない速度」と解釈されてきたそうです。
しかし、それでは制御困難の立証責任が検察側に重くのしかかることになります。
194kmという速度の危険性を、いかに客観的に示せるかが問われることになるでしょう。
11月28日判決へ!世間は厳罰化を求める声
小柳さんの命を奪った今回の事故。
果たして被告人に下される判決は、危険運転致死罪の適用となるのでしょうか。
それとも過失運転致死罪にとどまるのでしょうか。
世間の注目が集まっています。
ネット上で巻き起こる批判の嵐
弁護側の主張に対し、ネット上では批判の声が相次いでいます。
- ある意見: 「194kmが制御可能なわけがない」
- 別の意見: 「法定速度を大幅に超えるのは論外」
- 遺族に対する同情: 「実刑判決を望む」との声多数
一般道で194kmもの速度を出すことの危険性は誰の目にも明らかです。
法定速度を100km以上も超える速度で走行した被告人の行為を厳しく糾弾する声が、ネット上にはあふれています。
小柳さんの無念を晴らすためにも、実刑判決を望む人が多いようです。
法改正を求める声の高まり
危険運転致死罪を巡っては、適用要件の見直しを求める声も高まっています。
- 法務省の動き: 有識者検討会で見直しの議論を進行中
- 適用要件の課題: 曖昧な表現が適用を困難に
- 飲酒運転による死亡事故: 危険運転致死罪の適用が難しいケースも
現在、法務省の有識者検討会では、危険運転致死罪の適用要件見直しの議論が進められています。
「制御困難な高速度」といった曖昧な表現を改め、より適用しやすい法律にすることが目指されています。
飲酒運転による死亡事故でも、危険運転致死罪の適用が難しいケースが目立つなど、課題は山積みです。
2024年11月28日、大分地裁は被告人に判決を下します。
194kmという速度の恐ろしさ、小柳さんの尊い命が失われた事実を直視し、厳正な判断が下されることを願ってやみません。
そして、この悲劇を二度と繰り返さぬよう、危険運転に対する法律の整備と運用の改善が急務だと感じずにはいられません。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
まとめ:BMW194キロ死亡事故の弁護側主張と判決動向について
- 2021年2月9日深夜に大分市大在の県道交差点で発生した死亡事故が初公判へ
- 当時19歳の被告人がBMWで法定速度60キロを134キロ超過する194キロで走行
- 右折中の小柳憲さん(当時50歳)が車外に投げ出され翌日死亡
- 被告人は「何キロまで出るか試したかった」と供述
- 2024年11月5日の初公判で危険運転について「わかりません」と発言
- 弁護側は「制御困難な高速度に該当せず」と過失運転致死を主張
- 遺族による2万8000人の署名活動が訴因変更のきっかけに
- 2022年12月に過失運転致死罪から危険運転致死罪へ訴因変更
- 津市タクシー事故の判例が危険運転致死罪適用への壁となる可能性
- 「制御困難」の判断基準の曖昧さが法的課題として浮上
- 法務省の有識者検討会で危険運転致死罪の適用要件見直しを検討中
- 2024年11月28日の判決へ向け世論は厳罰化を求める声が多数
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