電動キックボード大手のLuupが、元警視総監の樋口建史氏を監査役に起用したことで、業界内外に大きな波紋が広がっています。
この人事は、安全対策強化と法規制対応の強化を図る狙いがあるとみられていますが、一方で「天下り」批判の声も上がっています。
この記事では、電動キックボードの急速な普及と規制緩和の経緯、事故や違反の増加、Luupの対応策、そして元警視総監起用に対する賛否両論について詳しく解説します。
さらに、新たな移動手段としての電動キックボードの可能性と課題、業界の今後の展望にも触れていきます。
- Luupが元警視総監を監査役に起用した背景と波紋
- 電動キックボードの普及と規制緩和の経緯、事故増加の現状
- Luupの安全対策強化への取り組みと課題
- 電動キックボード業界の今後の展望と社会的影響
元警視総監がLuupの監査役に就任、電動キックボード業界に波紋
2024年10月16日、電動キックボード大手のLuupが新体制を発表し、業界内外に大きな波紋を呼んでいます。
その中でも特に注目を集めているのが、元警視総監の樋口建史氏の監査役就任です。
樋口氏は警察組織のトップを務めた人物であり、その起用の背景には様々な憶測が飛び交っています。
Luupの新体制発表の背景と狙い
Luupの新体制発表には、安全対策強化と法規制対応の強化を図る狙いがあるとみられています。
具体的には以下のような体制となっています。
- 社外取締役: 元日本航空代表取締役社長の大西賢氏ら3名が就任
- 監査役: 元警視総監の樋口建史氏と経済産業省出身の弁護士の國峯孝祐氏が就任
この体制は、企業経営の経験者や法律の専門家を加えることで、安全性向上と法規制対応の両面から電動キックボード事業の強化を目指すものと考えられます。
樋口建史氏の経歴と起用の意図
樋口建史氏は、2011年8月に警視総監に就任し、警察組織のトップを務めた人物です。
- 北海道警裏金事件: 2003年に発覚した裏金事件の収束に関わり、マスコミ対応などで手腕を発揮
- 警察庁幹部: 警察庁刑事局刑事企画課長などを歴任し、警察組織のマネジメントに長けている
- 内閣府委員等: カジノ管理委員会委員やUber Japanアドバイザーなど、新たな業界の法整備にも関与
Luupが樋口氏を起用した背景には、その豊富な経験と人脈を活用し、電動キックボードの安全性向上と法規制対応を進めたい意図があるとみられています。
特に事故削減と違法駐輪対策は喫緊の課題であり、警察とのパイプを持つ樋口氏の手腕に期待が寄せられているようです。
電動キックボードの事故・違反状況
電動キックボードの事故や違反は近年急増しており、社会問題化しています。
警察庁の統計によると、以下のような状況です。
- 交通違反検挙件数: 2023年7月から2024年6月までの1年間で2万5156件
- 事故件数: 同期間で219件発生し、226人が負傷
- 都道府県別: 東京都が事故の約7割を占める
歩道走行や信号無視などの違反行為に加え、歩行者との接触事故も後を絶ちません。
特に東京都内の事故が突出して多いことから、Luupと自治体の連携による安全対策の強化が求められています。
電動キックボード普及と規制緩和の経緯
電動キックボードは近年急速に普及が進んでいますが、一方で法整備は後手に回っているのが実情です。
ここでは電動キックボードを取り巻く規制の変遷を振り返ります。
2023年改正道路交通法の影響
2023年7月、電動キックボードなどが「特定小型原動機付自転車」に分類され、16歳以上であれば運転免許なしでも運転できるようになりました。
この改正により、電動キックボードの利用者が一気に増加しました。
- 運転免許不要化: 16歳以上は誰でも電動キックボードに乗れるように
- 最高速度20km/h以下: 一定の安全基準を満たせば公道走行可能に
この規制緩和は、都市部の渋滞緩和や環境負荷低減などを目的としたものでしたが、一方で事故増加のリスクを懸念する声もありました。
市街地での利用増加と社会問題化
規制緩和により、電動キックボードは多くの人にとって身近な乗り物となりました。
特に都心部では、歩行や自転車、公共交通機関と並ぶ移動手段として定着しつつあります。
しかしその一方で、ルールを守らないユーザーによる問題行動も目立つようになりました。
- 歩道の暴走運転: スピードを出した無謀な走行で歩行者を威嚇
- 違法駐輪: 歩道上や駐輪禁止区域での乱雑な駐輪が常態化
- 飲酒運転: アルコールを飲んだ状態での運転による事故も発生
電動キックボードの利便性は認めつつも、このままでは都市の秩序を乱しかねないという危機感が高まっています。
適切な法整備とルール順守の徹底が急務となっているのです。
安全対策強化への取り組みと課題
事故や違反の増加を受け、電動キックボード業界では安全対策の強化が進められています。
大手のLuupも様々な施策に乗り出していますが、課題は山積みです。
Luupの対応策と自主規制の動き
Luupは事故防止と違法行為抑止のため、以下のような対策を打ち出しています。
- 利用者教育の徹底: アプリ上での注意喚起やルール順守の誓約を義務化
- 車体ナンバー導入: 車体に番号を付与し、違反車両の特定を容易に
- 違反者への措置強化: 悪質な違反を繰り返すユーザーのアカウント凍結など
さらに業界団体による自主規制の動きも出てきており、安全性向上に向けた業界を挙げた取り組みが始まっています。
ただし規制のあり方や基準については事業者間で意見の相違もあり、調整は難航しているようです。
東京都との連携可能性
東京都は電動キックボードの事故が特に多い地域であり、Luupにとって重要な活動拠点でもあります。
同社は東京都や区役所との連携強化を模索しているとみられ、その象徴的な出来事がありました。
- 樋口建史氏の息子: 現千代田区長の樋口高顕氏
- 千代田区での実証実験: Luupが初めて政府公認で公道走行の実験を実施
関係者の関与も指摘される中、Luupは東京都との協力関係を深めようとしているようです。
行政と連携した事故防止策や駐輪場の整備などが期待されますが、その実現には多くのハードルがありそうです。
元警視総監起用に対する賛否両論
Luupによる樋口氏の起用は大きな注目を集めましたが、その評価は賛否両論に分かれています。
特にネット上では批判的な声が目立っています。
「天下り」批判の声
警察組織のトップだった人物の起用について、ネットユーザーからは「天下り」だと批判する声が上がっています。
- 警察への忖度: 元警察トップを迎えることで警察の取り締まりを甘くさせるのではないかと疑念
- 利権への関与: 新しい業界で発生する利権に警察OBが関与しているのではないかと臆測
また、樋口氏がこれまでにカジノ産業など新たな業界の法整備に関与してきたことから、「ロビー活動」ではないかとの指摘もあります。
Luupの意図が安全対策よりも規制緩和にあるのではないかという見方です。
業界からの期待
その一方で、電動キックボード関係者の間からは、今回の人事を歓迎する声も聞かれます。
- 安全対策の強化: 警察とのパイプを持つ人材の起用で、実効性のある事故防止策に期待
- 法規制の整備: 電動キックボードに関する法整備を警察の視点から進められると期待
業界としては、電動キックボードがより安全で社会に受け入れられる乗り物となるために、警察の知見を活用したいという思惑があるようです。
Luupの動向は業界の指標になると見る向きもあり、その行方が注目されています。
電動キックボード業界の今後の展望
電動キックボードは新しいモビリティサービスとして、都市交通の課題解決に貢献する可能性を秘めています。
一方で、事故や違反の増加は大きな障壁となっています。
業界の健全な発展のためには、安全性の向上と適切な規制のバランスが重要です。
安全性向上への期待と監視
Luupに元警視総監が就任したことで、電動キックボードの安全対策強化への期待が高まっています。
警察の知見を生かした事故防止策や、行政との連携による駐輪場整備などが進むことが望まれます。
ただし、「天下り」批判にもあるように、警察との癒着による不適切な規制緩和への懸念も根強くあります。
Luupの動向には注意深い監視が必要でしょう。
透明性を確保し、安全性を最優先する姿勢を示していくことが求められます。
新たな移動手段としての可能性と課題
電動キックボードは、CO2排出削減や渋滞緩和など、都市の課題解決に貢献し得る移動手段です。
- ラストワンマイル: 駅から自宅や職場までの短距離移動に最適
- 観光での活用: 手軽に街の見所を巡れる新たな観光の形として注目
一方で、歩行者や他の車両との共存、事故責任の所在、車体の安全基準など、まだ多くの課題が残されています。
利用者のモラル向上とともに、社会受容性を高めるための地道な取り組みが欠かせません。
業界はこうした課題の解決に向け、自主規制の強化や行政との連携を模索していますが、Luupの動向がその行方を左右するかもしれません。
同社の取り組みが業界のお手本となるのか、それとも批判の的となるのか。
元警視総監を迎えた新体制の真価が問われています。
まとめ:LUUPの元警視総監起用と電動キックボード業界の展望について
- Luupが元警視総監を監査役に起用し、業界に波紋を広げる
- 安全対策強化と法規制対応が起用の主な狙い
- 電動キックボードの普及により事故や違反が急増
- 2023年の道路交通法改正で利用者が大幅に増加
- Luupが利用者教育やナンバー導入など対策を実施
- 東京都との連携強化を模索する動きも
- 元警視総監起用に「天下り」批判の声も
- 業界からは安全対策強化への期待の声も
- 電動キックボードは都市交通の課題解決に期待
- CO2排出削減や渋滞緩和に貢献する可能性
- 歩行者との共存など課題も多く残る
- Luupの取り組みが業界の今後を左右する可能性
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